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お気に入りのビュラン [銅版画の道具と材料]

お気に入りのビュラン.jpg
お気に入りのビュラン
ドイツ DICK社製 三角ビュラン / 巾 1.5㎜、巾 2.0㎜

ビュラン作家及びビュランに興味を持っている人は、どのようなビュランを手にしているのだろうかと思うことがあります。

日本で入手できるビュランは、アメリカ製、スイス製、それにドイツ製でしょうか。この三つのビュランを前にして、次のようなことを感じました。ここでのドイツ製はかなり以前に購入したものです。

先ず、アメリカ製は然程切れが良いとは思いません。しかし、私を含め多くの人が持っているものだと思います。オールマイティな感じですが別な言い方をすれば、強引に切り進む感じでしょうか。ビュラン自体も個体差があると思います。中にはどうしてもだめなものがあります。それでも、多く使用するのはこのアメリカ製になると思います。

スイス製は確かな彫りが得られるビュランだと思います。別の言い方をすれば、職人肌の切れ味のような感じがします。ただ、このビュランは真っ直ぐですので、銅版画に使用するには30°に曲げる必要があります。これはガスバーナーで加熱して曲げます。

ドイツ製のビュランですが、写真にあるものはかなり前に購入したものです。何も判らず手当たり次第にビュランを求めていました。このビュランも真っ直ぐなので曲げる必要があります。形状は先細りです。このビュランのよい所は切っ先が銅板に食い込む感じが他のビュランとは違います。これも別の言い方をすれば、芸術家肌と言う感じでしょうか。私のお気に入りのビュランです。ただ、同じドイツ製のビュランでも最近のものは少し質が劣るように思います。それに形状も異なります。

すでに亡くなっている渡辺千尋氏の銅版画集「象の風景」の後書きにあるビュランの写真を見ると、先細りのドイツ製のビュランだと判ります。そのビュランを購入すると少し肉厚の柄がついてきます。その握りを自身の手に合わせて作り変える必要があります。そのままでは握りにくいからです。それで、掲載されているビュランの写真を見ると、手に合わせて加工した後が見て取れます。

ここで述べているドイツ製のビュランで彫った線は、他のビュランで仕事をしたものとは線の質が違います。もし作品に接する機会がありましたらじっくり見てください。そして、末尾の後書きは一読の価値があると思います。その「ビュランについてのお話」は、ビュランに対する賛美の吐露です。 
※ 象の風景 / 渡辺千尋銅版画集 1988.12.27 ISBN4-946419-60-8 c0072

どうして、日本では質の良いビュランがないのだろうかと思いますが、それは文化によるのかも知れません。

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